人工知能(AI)ってなに?

今更聞けない、人工知能(AI)について紹介します。

近年話題になっている人工知能(AI)の分野では、米国の大学や企業が研究開発をリードしています。ディープラーニングやビッグデータなどの新技術を駆使し、GoogleやFacebook、Microsoftなどの大手プレイヤーが参入しており、今後大きな産業になる可能性があります。今回は、人工知能の全体像と世界の先進プレイヤーの取り組みについて、基本的な内容を紹介します。

 

人工知能(AI)とは?

W人工知能(じんこうちのう、英: artificial intelligence、AI)とは、人工的にコンピュータ上などで人間と同様の知能を実現させようという試み、或いはそのための一連の基礎技術を指すものです。

 

人工知能の活用事例

最近、毎日のように人工知能やAI(Artificial Intelligence)という言葉を目にするようになっていませんでしょうか。2017年6月には将棋やチェスよりはるかに難しいとされる囲碁で、人工知能「AlphaGo」が世界最強のイ・セドル棋士に勝った、という話題も出ました。

市場変化の予測まで織り込まれた自動株取引、コールセンターの自動対応、ロボットタクシーや受付窓口ロボット、製造や物流の高度な自動化など、これまで人間が対応せざるを得なかった様々な場において人工知能の活用が進み始めています。

ヒトの言語理解や推論能力が高まれば、スターウォーズのR2-D2のようなドロイドの実現もできるかもしれません。

 

ディープラーニングやビッグデータ

過去の人工知能は、膨大な知識やルールなどを人間が全て教える必要があり、現実社会で通用するレベルにはなかなか近づけなかった。しかし、最近の人工知能は「機械学習」、つまりコンピュータが勝手にルールを学んでくれる技術が軸となっています。

特に、大量のデータから自分で物事を分類するルール(特徴量と言われる)を見つけ出す「ディープラーニング(深層学習)」という技術のおかげで、人工知能の能力が飛躍的に進化し、実用レベル、適用の幅、可能性が大きく広がりました。

周辺技術の進化も人工知能の発展の大きな要因となっています。「ビッグデータ」や「クラウドコンピューティング」など大量データをネットワークで集めて処理する技術、ネットワーク自体の高速化、ヒトから機械まで全て繋がるIoT(Internet of Things)、大量の画像を高速処理できるGPU(Graphics Processing Unit)の進化など、近頃よく話題になるITの進化が、実は人工知能の発展、実用化にも直結しているのです。

 

Googleの取り組み

Googleの取り組みとして完全自動運転車の試行が有名です。しかし、それだけではなく、「ディープラーニング」の生みの親、ジェフリー・ヒントン氏等を招聘し、自社の人工知能研究を推進すると共に、人工知能やロボティクスに関連するベンチャーの買収も20社を超えるほど積極的に仕掛けています。

「AlphaGo」も、Googleが買収した「ディープラーニング」のベンチャーDeep Mindが開発したものです。

さらに先日、「機械学習」に特化した半導体チップ「TPU」の自社開発も含め、今後一層人工知能にフォーカスするとの発表が行われた。データ、アルゴリズムだけでなく、「無いなら作ってしまえ」とばかり専用ハードまで創ってしまう動きには、脅威さえ感じますね。

様々な活動をどう融合させて事業にしていくのかが気になるところだが、ヒトや移動体に関わるデータを徹底的に集めて解析できる状態を築き、自社のユーザ接点を活用したビジネスに繫げていくと思われます。

Facebookの取り組み

Facebookは「ディープラーニング」の開発第一人者、ヤン・ルカン氏を招聘してAI研究所を創設し、SNS上で交わされる大量な会話や写真画像などの認識・解析を進めています。Googleに負けじと人工知能関連ベンチャーも10社ほど買収しています。

4月には、企業向けにチャット・ボット(ユーザのメッセージや質問に自動応答するメッセンジャー)の開発プラットフォームを無償提供し始めました。いわば、スマホ上にバーチャルなドロイドを作れる仕組みを作り出しています。

利用企業にとっては手間をかけずにユーザと繋がる対話ツールが作れるし、Facebookにとっては、企業を多く巻き込むほどデータもたまり、人工知能の能力も高められる利点があります。「仲間と一緒に知能を磨く」賢いやり方ではないでしょうか。

 

Microsoftの取り組み

Microsoftは、文字だけでなく音声による会話も含めて、対話支援の人工知能開発に取り組んでいる。自社のビジネスのクラウドサービス化を進める一環で、ユーザーとのインターフェースも徹底的に簡単、便利にしようとしています。

スマートフォン等を音声で操作可能にするインタフェース「Cortana」を提供するとともに、Facebookと同様に、自動対話支援ツールを他社も利用できるようにするなど、クラウドで様々なAPI(Application Program Interface)が用意されたプラットフォームとして提供しており、様々な連携すると考えられます。

 

Amazonの取り組み

Amazonも2017年6月に発表があったが、リビングに置けるスピーカー一体型対話デバイス「Amazon Echo」を販売している。音声による様々な家電の操作や、質問への自動応答などが行えます。

デザイン性も優れており、推定累積販売台数は300万台とも言われている。その裏にはAmazonが開発した人工知能「Alexa」が使われており、利用者が増えるほどに機能も賢さも進化しているとのことです。

 

IBMの取り組み

IBMは、昔から開発を進めてきた人工知能「Watson」の技術を、近年一般のソフトウェアデベロッパーに公開し始めました。

パートナー企業と一緒に、産業別に人工知能のソリューションを生み出す「エコシステム」を構築するのが狙いとのことで、企業の情報システム構築を担うSI(System Integration)企業らしいアプローチだ。 ヘルスケア、金融などの分野で適用事例も積み上がっていると考えられます。

 

最後に

大手ITプレイヤー各社の取り組みを俯瞰すると、人工知能の能力向上、実用化を加速させるために、以下の3点が、共通していることが分かる。

  1. 大きな狙い、目指す姿を持っている
  2. 多くのデータを集められるように、仲間をより多く集める工夫をしている
  3. データが集まる「ヒトとの接点/インタフェース」に仕掛けを作っている

人工知能の使い方をITプレイヤー側だけでなく、利用者や企業側の知恵も集めて考えるという行動は、とても合理的であるし、多くの仲間を囲い込んだプラットフォームを築くための覇権争いとも考えられます。

なお、これら大手ITプレイヤーの後ろには、多くの人工知能関連ベンチャーが存在している。ある米国ベンチャーキャピタリストによると、2015年時点で世界にアクティブな人工知能関連ベンチャーは1,800社近く存在し、うち半数強が米国に集中している。

実は筆者の所属するDI(ドリームインキュベータ)の投資先も含まれるが、筋のよい米国の人工知能関連ベンチャーの経営者や優れた研究者たちは、ほとんど皆、個人どうしが密に繋がっている。

大手ITプレイヤーたちは、自身に足りない技術、あるいは人材を、そのようなネットワークの中から競い合うように取り込んで補完し、それぞれが描く将来構造の実現を目指しています。