機械化されそうな業種について紹介をします。
ロボットに置き換えられやすい職業とそうでない職業があります。ひとりの人が一連の仕事としてさばいているタスクの中には、自動化しやすい仕事内容とそうでない仕事内容があると考えられます。そこでマッキンゼーでは、主に米国ではありますが、あらゆる職業のあらゆる仕事内容がどれくらい自動化されやすいかを分析したんです。
マッキンゼーでは米国労働省のデータベースO*NETと労働統計局のデータを使い、米国内の800種類の職業に含まれる2000種類の仕事内容が何時間ずつ行われているのかを実態を分析しました。さらに仕事内容の性質を「専門性の適用」「関係者とのやりとり」「データ収集」「データ処理」など7つに分類し、これらが既存技術で置き換えることが出来るか調査し、特定の仕事内容を既存技術で置き換え可能な時間の割合を出し、それを「自動化の技術的実現可能性(technical feasibility of automation)」と定義しました。
自動化しやすい仕事内容、そうじゃない仕事内容
自動化の実現可能性が高い仕事内容の事例として、例えば工場のラインの業務一部の溶接作業や食品加工の一部の業務内容が例示されています。これらは「いつも大体同じ環境で同じ動作を繰り返す作業」というような意味で「予測可能な肉体労働」とカテゴライズされていて、自動化の可能性は全業種平均で78%とマッキンゼーは推測しています。
「ライン製造の仕事はロボットに置き換えられる」と解釈をされる方も多いと思いますが、事実としてそういう訳ではありません。いずれの業種にも、生産性が低い領域があります。「金融」とか「経営」とかの領域もこの「予測可能な肉体労働」が含まれてると報告があります。
一方で、自動化の実現可能性が低いのは、いわゆる管理職的な「他者の管理」、勉強や訓練を要する「専門スキルの活用」、顧客対応などの「関係者とのやりとり」、建設作業のような「予測不可能な肉体労働」といったタスクです。もっと細かく見ると、ある種のタスクを自動化できる可能性は業種によって違います。たとえば一口に「予測可能な肉体労働」といっても、その中でも一番自動化されやすそうなのは「宿泊施設・フードサービス」分野で、可能性は90%にも及びます。つまりホテルのカウンター業務とかレストランのウェイターみたいな仕事は自動化されやすいし、実際自動化される動きが進んでいます。それに対し、「運輸・倉庫」や「医療・社会福祉」分野の「予測可能な肉体労働」の自動化可能性は50〜60%となっています。またほとんどの業種では「予測可能な肉体労働」が一番自動化しやすいとされているのに対し、たとえば「農業」では「データ収集」が一番自動化しやすいなど、逆転している分野もあります。ロボット化が始まる場所とかそのあり方は、業種によって大きく違ってきそうです。
仕事の再定義がされる
マッキンゼー報告書の前段となる報告が2015年にあったんですが、その中でもマッキンゼーは職業のうち60%において、作業の最低30%が自動化される可能性があると論じていました。逆に考えると、あらゆる仕事が機械に置き換えられるわけではなく、部分部分が自動化されていくということです。
ただそれによって、いろんな仕事の領域を再定義する必要が出てきます。過去の例を振り返れば、たとえばATMが普及した今でも銀行の窓口は生き残っていますが、その役割は大きく変化しています。
「ある作業が自動化可能だからといって、必ずしも自動化されるとは限らない」とマッキンゼーの報告書には記載されています。「簿記・会計・監査事務員にはスキルとトレーニングが必要なので、ベーシックな調理師よりも希少である。だが彼らが行う作業を自動化するコストは低く、ソフトウェアと基本的なコンピューターがあればたいていは事足りる。」
つまり、あるタスクにロボットが使われるかどうかは、単に技術的に可能かどうかだけでなく、自動化のコストとか、そのタスクに必要なスキルの希少性とかが総合的に加味されて決まる、ということです。またこの報告書では、社会的な受け止め方も、あるタスクが機械化されるか否かに影響すると指摘していて、だから「ここは人間じゃないと寂しいなぁ」みたいな感情も無意味ではないということです。